「No Man's Land」を観る

映画「No Man's Land」を観る。2001年の作品、セルビア、フランス、イギリスなど、複数の国が制作に絡んでいる。ボスニア紛争を題材にした映画。
ボスニア軍の交代要員が深夜に霧で道に迷い、セルビア軍に攻撃されて、ボスニア軍、セルビア軍両方の中間の無人地帯(ノーマンズランド)内の塹壕に逃げ込む。そこへ事態を確認するためにセルビア軍兵士が偵察に来て、というストーリー。
激しい戦闘シーンもなければ、悲劇的なストーリー展開や精神的な葛藤があるわけでもなく、中間地帯にいる兵士たちは一言で言えば「分からず屋」、取り巻きの兵士や国連軍、マスコミ連中などは「偽善者」「傍観者」として描かれる。悲しいかな、これがリアリティに溢れてしまうわけで、結局「分からず屋」と「偽善者」によって戦争は形成されているのかと思うくらいだ。国連軍のフランス人曹長が一人正義感を発揮して、見事な頭脳プレーで偽善者たちを操り、ノーマンズランドに残された「分からず屋」の兵士たちを救出しようとするのだが、その正義感は最後の最後に見事な空振りとなって終わってしまう。見るからに勤勉そうなドイツ人爆弾処理技師の冷徹な報告、その後の小芝居と、去っていくマスコミたちの車両群、その白々しい光景のあとで、ノーマンズランドに兵士が一人残される。平和を訴えるわけでもなく、戦争の悲劇を表現するわけでもなく、ただ馬鹿げた形での人の死と幕引きがそこにある。綺麗な反戦映画を求める向きには不評だろうけれど、いかに馬鹿馬鹿しい理由で人の命が奪われていくのかを的確にしてしているという点で、優れた戦争映画だと思う。
それにしても、ヨーロッパの、ユーゴスラビアの紛争ってのは、日本からは遠い出来事だよなあ。オシムストイコビッチが日本に来ていなかったら、興味すら持たなかっただろうな。